NOTE

映画美術の仕事

映画「ゆきてかへらぬ」

プランが完成したら図面の詳細を作成していく。映画美術は、建築家とは違って、映画のシーンで活きる建物を創っていきます。建物造作だけではなく、そのシーンで、そのカットで効果的に映る建物を必要な分だけ造作します。その為に、3Dや模型で検証していきます。

例えば、あるシーンで、路地を2人が並んで印象的に歩いて行く、と台本に書いてあれば、2人が並んでバランスの良い、路地の幅、サイズを検証します。一般的でリアルな路地の幅寸法は把握した上で、映画的な寸法を様々な視点で検証して、路地の幅を決めていきます。
また、あるシーンで、
1人は路地に立ち、1人は家の2階の窓から声を掛け合う、とあれば、2階の窓から、路地に立ってる人が見えるように、屋根の寸法を考えます。屋根が大きすぎて、下の人が見えなかったら、そのセット(建物)では、シーンが成立しません。また、2階の窓に立つ人物も、下から窓越しにちゃんと見えないとシーンが成立しません。

さらに、その舞台における、小道具や装飾品、衣装などの色や形もチェックしていきます。舞台に馴染んでいるか、目指す世界観にマッチしているかを確認します。その上で、照明を効果的にライティングして、舞台を創り込み、レンズを通してシーンを撮り、映画を創っていきます。
映画美術は、台本に書かれてる全てが成立するように、全シーンの舞台を創りながら、作品全体の世界観も創っていきます。
映画にとって、映画美術は大きな生命線の一つになります。

■セットをプランニングする。
雨や雪、夜の灯り。様々なシーンが成立するよう、台本に沿って考えていく。特に、このセットは映画の冒頭を飾るので、映画の世界観も含め表現する。

■図面や3Dで、シーンが成立するか検証していく。映る範囲を把握しながら効果的なデザインを盛り込んでいく

■図面を元にセットを造作していく

■プラン通りのセットを完成させる。さらに、照明などを仕込んで美術プランのような世界観も表現していく